麺喰ワンダラー(Menkui Wanderer)
column 2025.06.13 中華そばの店 りょうが
ラーメン(1000円)+つけめん(1100円:麺少なめ200gにすると烏龍茶サービス)+吊し焼きチャーシュー(200円)

2025年6月11日オープン。(千歳烏山の間借り営業からの移転)
東京のラーメン史を語る上で長野県人の存在は大きい。複数人の長野県人から始まった「丸長」グループ。そこから派生した「大勝軒」「丸信」などもそう。同じ荻窪で人気の「春木屋」も別グループだが長野県出身だ。一時期、130店舗まで展開した「生駒軒」の創業者は「東池袋大勝軒」の山岸さんと同じ山ノ内町出身。小さな町から二人が東京で大成功しているのがスゴい。
比較的最近の話では、信州のカリスマ・塚田さんが「魚雷」「烈士洵名」などを出店。長野市を中心に展開している「ゆいが」グループの田中さんが2013年にオープンした「すずめ食堂」は最近「ヤマスズメ」(押上)にリニュ-アルし、話題になった。そしてこの「りょうが」も松本市を中心に4ブランド8店舗(他にFC5店舗)展開している実力店の新ブランド。しかも東京ラーメンの聖地“荻窪”に出店というのだから、スゴい。

開店2日目の11時10分着で3番目。帰る頃には5人待ちくらい。
ラーメンの味の方は、店主が今、一番好きな「べんてん」「としおか」インスパイアでここ1年はこの2軒を食べまくっていたとか。そして、その味をベースにしたラーメンとつけめんを基本メニューとして出している、というだけでラーメン好きはそそる。その上、荻窪に出店した以上、やらねばならぬ、ということで裏メニューとして「丸長」(荻窪)のつけめんインスパイアも用意しているというのだから驚き。つけめんの食券を渡す際に「荻窪で!」と言えば、出してくれる。

そんなわけで、連食可能かどうかを聞いた上でラーメン1000円とつけめん1100円を「荻窪で!」と頼んだ。また吊し焼きチャーシュー(もも:200円)が有料トッピングにあったのでそれはつけめんにプラスした。
まずはラーメン。得意の煮干しを効かせながら、確かに「べんてん」を感じさせる。丼や麺(三河屋製麺)はかなり近づけているがスープはあえてほどほどにしているような印象。味自体は実においしい。250gの麺を食べさせるパワーを持っている。
そしてつけめん。おぉ〜見た目にもそれらしく感じるビジュアル。こちらも二つのスープを作るのはなかなか大変なこともあるのだろう、アレンジした感じだがとても好み。食べ終えた皿の上につけ汁の器をのせて「スープ割りください」と食べる方も「丸長スタイル」で。そういや、まだ開店二日目でこちらは公式SNSがない。なので裏メニューは一部にしか知られて無いはずだが、つけめんの人はおそらく全員「荻窪」だ(笑)。情報が早いというかなんというか。

なお「みのひ」との関係が気になって聞いてみたが「べんてん」&「としおか」に通う仲間同士というような関係性。そのあたりも面白い。互いの麺も同じ三河屋製麺だが少し変えているようだ。そういう意味では食べ比べも面白い。
個人的には塩と通常のつけめんも食べに来なければならない。そう思うほど、ラーメンもつけめんもよかった。ペで後会計制なので少々時間がかかること。それと店内が実に暑い。夏は大変そうで対策を考え中とのこと。お客さんも暑そうだが厨房内はもっと暑いので倒れる前に手を打ってください。(^^;
店舗情報
中華そばの店 りょうが
公式情報
〒167-0043 東京都杉並区上荻1-4-9
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麺喰ワンダラー(Menkui Wanderer)
column 2025.06.12 西荻窪 金菜亭
ニラそば(1000円)+西荻タンタンめん(900円)+ワンタン(150円)

2025年5月14日からの長いプレオープン期間を経て、6月6日グランドオープン。
看板やショップカードには「博多金菜亭」となっているが、正しくは「金菜亭」とのこと。
《RAMENOIDさんのレビューが秀逸なので読んでみてください。さすがトップレビュアー!》
実はこちらの店主が作るラーメンを15年前に中目黒で食べている。私も企画に参加した『Yahoo!ラーメン勝ち抜きバトル(ラーメン界デビューを目指す者たちの戦い)』に出場しているのだ。私は審査員として全出場者のラーメンを食べた。参加者の中には、今では超有名人気店になった店主(当時はまだスタッフ)も参加していた。
こちらの店主は「あっさり磯ラーメン」で出場。優勝は出来なかったが、その後、博多で出店。博多にも食べに行った。何度かの移転をして、いよいよ東京進出。ウリは二つで二刀流。まずは「金菜上湯中華そば」。博多からの進出だが独特の清湯スープで“飲み干し系”中華そばを謳っている。そしてもうひとつは「天使のラー油薫る 西荻タンタンめん」。新しいタイプの担々麺を創作。芝麻醤を使用せず、オリジナルの天使のラー油と専用カエシを使った担々麺。

券売機は無くオーダーシートにお好み(味、油、麺の固さ、トッピングなど)を記入して注文するスタイルは「一蘭」風。食後、席にて後会計制。現金・PayPay・クレカ等キャッシュレスにも対応。
主なメニューは、金菜上湯中華そは850円、西荻タンタンメン850円、他。
スープが独特の作りなのでインスタから引用。『食材ロスを徹底的に無くし、小さいスペースでも手作りできる「出汁」を開発。簡単に表現すれば、骨を使わずにできるスープ。軟骨ソーキ(豚バラ軟骨)と玉ねぎを使うことによりクリアな深みある豚スープを炊き上げ、博多の歴史あるうどんの出汁を重ね合わすことにより、博多の両輪を感じることができる新しいスープが生み出されました。豚出汁に使用したホロホロの軟骨ソーキは中華そばのトッピングに使用して余すことなく味わっていただきます。独自に開発したシオダレと10年余に渡ってお付き合いしている130年の歴史を持つ福岡の老舗醤油店「ゑびす醤油」のほんのり甘いお醤油を使った麺料理とおつまみをお楽しみいただきます。』

まず、金菜上湯中華そばの塩を頼もうとしたがニラそばの文字を見つけてしまったら、完全に気持ちがそちらに行ってしまった。もしかしたら夜のメニューだったかもしれません。(すみません!)
スープがやや甘めで豚肉出汁と和出汁がうまく融合して実においしい。“飲み干し系”を謳うだけあり、飲み干してしまった(笑)。軟骨ソーキも柔らかくておいしい。次回は追加トッピングしたい。
麺は新宿だるま製麺の低加水細麺。これがなかなかいい組合せでとても好印象。いくつかの麺を試した結果、スープとの相性の良さでこの麺にしたらしい。完食完飲。

次に西荻タンタンメンを1辛でワンタントッピング。ベースのスープは同じらしいがいい意味でまるで別な印象。1辛でも十分な辛さと旨味があり、辛党には受けそう。“天使のラー油”と名付けている自家製ラー油がクセになるウマさ。香りもいい。『醤油ラーメンがベースであること、肉味噌が載っていること、ラー油を使ってることの3つが揃えば“西荻タンタンめん”を名乗ってもらって構いません』とのことで広まったら面白い。こちらはニラ玉子とじ麺があり、宮崎辛麺風らしい。(食べてみたい!)
2杯とも博多で食べたときよりもかなり好印象で、次回は塩とニラ玉子とじの連食をしたい。
ちょっと誉めすぎなので難点をあげると昼はワンオペで後会計制なので少々時間がかかること。それと店内が実に暑い。夏は大変そうで対策を考え中とのこと。お客さんも暑そうだが厨房内はもっと暑いので倒れる前に手を打ってください。(^^;
店舗情報
金菜亭 公式情報
〒167-0053 東京都杉並区西荻南2丁目25-13 キョーリンビル101
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麺喰ワンダラー(Menkui Wanderer)
column 2025.04.25 荻窪中華そば 春木屋 恵比寿店

「春木屋」の創業は1949年(昭和24年)。私が「春木屋」を初めて食べたのは、上京してきた頃なのでもう50年近く前のことになる。もう半世紀になるのか。東京に来て初めて住んだのが姉の家の近くの昭島市。なので都内に出る際は中央線を使い、定期券を持っていたのでよく途中下車して沿線のラーメンを食べていた。
その頃から「春木屋」は有名だったのでよく食べた。荻窪はラーメン激選区と呼ばれ、あるいは「東京ラーメンの聖地」みたいな言われ方をして頻繁に途中下車したものだ。
(参考:東京ラーメン)
会津のラーメンで育った私だが、もう東京在住歴の方が圧倒的に長いので「東京のラーメン」が血となり肉となっている。
そんな「春木屋」が後継者問題で富士そばのダイタンフード株式会社に事業継承の話を持ちかけ、2020年頃に合意に至ったようだ。その流れの中で2022年、川崎ラゾーナに出店し、そして今度は恵比寿に2025年4月17日オープン。
川崎にも食べに行ったし、今度は恵比寿に出店とは感慨深い。
11時半頃、恵比寿駅東口のバス通りを行くと行列が見えてきた。やっぱり並んでるか、と思ったらそれは「東京豚饅」の行列で、ホッとしたのも束の間。その隣にある「春木屋」の行列の方が長かった。と言っても十数人。カウンター15席 4人テーブル2卓の計23席あり、意外と回転は速い。(食べ終えた12時過ぎには15人くらいの待ち)

主なメニューは、
中華そば950円、わんたん麺1350円、ちゃーしゅー麺1450円、特製中華そば1550円、油そば950円、つけ麺1050円、納豆つけ麺1150円、チャーシューご飯380円、ミニ春木屋昭和カレー380円、他。
完全キャッシュレス制。22時以降は深夜料金。午前3時まで営業。
中華そばとミニカレーを購入。ラーメン好きには有名な「春木屋理論」というのがあり、日々味を進化させている、というもの。
今回も恵比寿店を出すに当たって“進化・変化”したと思う。
川崎の時は、イメージとは違っていたが、今回は「何度か食べてみよう」と思えたので会社や家から近いこともあり、これから何度も食べに来るであろう。まずは近いうちに「納豆つけ麺」を食べに来たい。
店舗情報
荻窪中華そば 春木屋 恵比寿店 公式情報
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1丁目5−10
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東京ラーメンとは
オーソドックスな醤油ラーメンであり、日本式ラーメンの原型とも言える存在。「中華そば」「支那そば」の呼び名でも表示される。1910年に当時流行の最先端だった浅草に店を構える「来々軒」が発祥とされており、叉焼(チャーシュー)、支那竹(メンマ)を初めてトッピングするなど、日本式ラーメンの基礎を築いた店とされる。鶏ガラを中心に野菜や豚骨でじっくり煮出した透明感のあるスープを使用し、麺はスープに絡みやすい中細の縮れ麺が一般的である。また、近年は動物や野菜のダシに加え、魚介をスープのダシとすることが多い。
様変わりする「東京ラーメン」
古くから「東京ラーメン」というのは間違いなく存在していた。それらはあっさりとした醤油味に細めの縮れ麺、シンプルな具で構成される。スープは煮干しや昆布など海産物系が使われ、弱火で煮出した透明感のあるスープが特徴である。しかし、いまの時代、東京で食べられるラーメンに関していえば、無国籍・全国版である。ほとんどどこの地域の麺類でも食べられるようになった。全国各地の有名店が次々と都内に出店し、群雄割拠の様相を呈している。
浅草の「来々軒」が東京初のラーメンと言われており、1910年の開店。日本のラーメンブームの発祥と言われる。現在は店を閉めてしまったが、その流れを汲む店が千葉の稲毛にあり「進来軒」として現在も東京ラーメンを出している。
その後、東京では多発的にラーメン店が登場した。老舗では「大勝軒」(人形町:1912年)、「萬福」(銀座:1929年)、「春木屋」(荻窪:1949年)など。老舗の「萬福」はすでに三代目になるが昔とかわらぬ味を銀座で提供し続けている。三角形の卵焼きが印象に残るラーメンである。
ラーメンジャパン / ラーメン店の例
東京の老舗ラーメン店の例
背脂チャッチャ系
一方、背脂チャッチャ系の元祖である「ホープ軒本舗」(吉祥寺:1938年)から「ホープ軒」(千駄ヶ谷:1960年)や「土佐っ子」(ときわ台:1970年頃)が誕生し、東京背脂系を形成する。
「ホープ軒」からは「弁慶」(堀切:1972年)、「香月」(恵比寿:1973年)など、一世を風靡するお店も誕生した。
※背脂チャッチャ系とはスープにコクを出す為、煮込んだ豚の白い背脂をスープに入れること。網で背脂をチャッチャッと振りかける動作(音)から定着した呼び名。
東京背脂系ラーメン店の例
荻窪ラーメン
荻窪では「春木屋」以外に「丸福」「丸長」「丸信」「佐久信」「二葉」「漢珍亭」などの人気店があり、荻窪ラーメンという名称で呼ばれていた。(漢珍亭、佐久信 閉店) どちらも老舗で「春木家本店(1931年創業)」と「春木屋 荻窪本店(1949年創業)」があるが兄弟親戚関係で独立採算なのでどちらも本店と名乗っている。
荻窪ラーメン店の例
「丸長」からつけめんの「大勝軒」が分かれていき、こちらも後に一大勢力になっていく。1990年代には車で食べに行くことも多かったため街道沿いに人気ラーメン店が集中した。環七ラーメン戦争などという言葉が生まれたのもこの頃である。
環七ラーメン戦争
環七ラーメン戦争とは1990年代初頭、東京の外側を半周する都道「環七通り」沿いに出現した数々のラーメン店とその熱気と人気を指す。深夜まで路上駐車の列ができ、住人との揉め事も起き、社会問題となる。全盛期には100軒以上のラーメン店がしのぎを削ったとされ、今でも70軒以上のラーメン店が営業する激戦地との事。当時の代表店「なんでんかんでん」「土佐っ子」は閉業して後継店が別の場所にできているが、当時から根強く現在も営業している店舗があるので例として店舗を以下に示します。
1986年「食材の鬼」と呼ばれた佐野実氏の「支那そばや」(藤沢→横浜)の登場により、ラーメンに対する「こだわり」が芽生え始めた。
96年組
1996年に創業した「麺屋武蔵」(青山)「青葉」(中野)「くじら軒」(横浜)の存在が後に影響を与えることが多く(96年組と呼ばれている)、インターネットの普及とともにラーメンも大きく進化・発展していった。店舗数も県別では圧倒的で最近では若い人の出店も多く、最新のトレンドを生み出している。
中国から伝来したラーメンに「醤油」を使うことで「日本式ラーメン」が誕生したと言われている。東京におけるラーメンの特徴は「醤油」であろう。スープは鶏ガラベースで豚骨を加える場合でも清湯(半透明の澄んだスープ:醤油色)が多く、そこに野菜や魚介系の和風出汁などを加えるのが一般的。煮干しや鰹節など魚介系もよく使われていた。
96年組(創業年)と呼ばれている「麺屋武蔵」や「青葉」は動物系と魚介系を別取りし、直前にブレンドするという方式で香りを立たせていた。それを「Wスープ」と呼んでいる。
11年組
2000年に入ってからは若い店主が店を出すことが増え、斬新なラーメンが増えていった。特に2011年に創業した「ソラノイロ」「くろき」「マタドール」は11年組と呼ばれ、新しいスタイルを築き始めた。
多様化・原点回帰・進化
2015年には世界で初めてラーメンがミシュランで星を獲り、世界的にも注目された。千円の壁と言われていたが、もはや人気店では千円超えを果たしている。最近では「原点回帰」などという言葉とともに見た目は昔懐かしいタイプに見えるラーメンも増えてきたが出汁の取り方や、スープの濃度(清湯でも高い濃度がある)に大きな違いがあり、原価の掛け方が変わってきた。また醤油その物にこだわったり、香味油にも工夫するようになってきた。
水と鶏しか使わない「水鶏系」という言葉が出てきたのも最近だ。鶏ガラだけではなく、丸鶏を使ったり、産地を厳選したり、こだわりにはとめどない。
新しいタイプの醤油(東京)ラーメン店 例
水鶏系ラーメン店 例
約2000店、おそらく世界で一番多くのラーメン店が存在する東京。今後も進化を続けるでしょう。