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ラーメンペディア

高級日本料理店が手掛けた 麺や紀茂登の進化する「特製醤油」と「特製塩」 この夏、ラーメンの難しさ・奥深さを知る

今日の一杯

「麺や紀茂登(きもと)」(東京都中央区)は、神戸市から東京・神楽坂エリアに移転した日本料理店が手掛けたラーメン屋だ。3日にオープン。

私は神戸時代に料理を一度だけ食べていて、大変おいしかった。ネットで予算を見ると6万~8万円となっていて、私の財政的には厳しい高級店。そんなお店の店主がラーメンを出すというのだから注目だ。

有名ラーメン店主もこぞって行ってるようだ。「高級日本料理店が作るラーメン」「1杯3000円のラーメン」というだけで、かなり期待は高まる。しかし、ひねくれている私は「ラーメンはそんなに簡単じゃないですよ~」と思いながら店に向かった。

ネットでの完全予約制で30分交代。カウンター10席で、10分ごとの予約なので3、4人ずつの予約だと思われる。

塩は1日限定5食なので開店早々に売り切れるもよう。まず醤油(3000円)を注文して、翌週にまた行って特製塩(3500円)をゲットした。スープは熊野地鶏から引き出される深いうま味、天草大王の風味豊かな香り、岡崎おうはんの独特な切れ味。これら3種の銘柄鶏をガラではなく、丸鶏で使用。さすが3000円だけある!

利尻コンブとかつお節も使っており、薄口醤油で見た目は塩味にも見えるほど。スープは鶏が効いており、実においしい。残すなんて、もったいなくて完飲。お替わりしたいくらい。スープ用の水は秋田県、白神山地のものを使っているようだ。飲み水は「パイウォーター」を使用。

麺はいろいろと試した結果、岡山の製麺所へ特注依頼。配分などにもこだわっており、デュラムセモリナを多めに、プラス小麦粉と香りを出すためにライ麦を少々。翌週行ったらすでに麺が変わっていた。1週間で進化したわけだ。

なお、おいしいスープとおいしい麺を組み合わせておいしいラーメンができるかと思えば、そうではなく、そこがラーメンの面白く奥深いところだと言える。さらに具が加わって、三位一体のバランスが大事だ。

そんなバランスの取れたおいしいラーメンを作るために、ラーメン店主は時間と手間をかけて、工夫・努力して作り上げている。丼一杯でバランス良くおいしいラーメンを表現するのは、なかなか難しいことなのだ。

おいしいスープと個性的な麺、良い素材のトッピングを組み合わせている。でも連日、味見したり、お客さまの声に耳を傾けたりして改善していけば、かなりおいしいラーメンができあがりそう。連日食べた人がアップされるので、日々進化しているのが分かる。1カ月後くらいにまた食べに行ってみたい。

麺や紀茂登(東京メトロ茅場町駅から徒歩2分) 高級日本料理店がラーメンに進出。特製醤油は3000円、特製塩(1日限定5食のみ)は3500円。この夏、話題のラーメン店。ラーメンの難しさ、奥深さを知ることだろう。完全ネット予約制。

■大崎裕史(おおさき・ひろし) 自称「日本一ラーメンを食べた男」。2022年3月末で約2万7500杯のラーメンを食破。株式会社ラーメンデータバンク代表取締役、日本ラーメン協会理事。Webおよび携帯の「ラーメンバンク」を運営している。