京都ラーメン(京都府)
京都ラーメンとは
京都府京都市を中心に提供・消費されるラーメンや、京都が発祥のラーメンの総称である。
系統はおおまかに3つに分けられるとされ、以下のものである。
●豚骨、豚肉の出汁を用いた濃厚色醤油ラーメン(あっさり系)
●鶏ガラ主体のスープに背脂を浮かせたラーメン(背脂チャッチャ系) …背脂醤油か背脂豚骨
●鶏白湯ラーメン(こってり系)
京都以外の外部エリアから入ってきたものやジャンルの異なる系統のものも多く、複雑であるのが実情だ。九州ラーメン系や塩ラーメン系、中華そば系など東京ラーメンも流入。
首都圏に発生した「京風ラーメン」とは、京料理をイメージした和風だしで細麺、薄味の醤油ラーメン「和風ラーメン」が発案されたもの。だが実際は薄味のラーメンは京都では少数派とされている。
特徴
麺は細めのストレート角麺が使われていることが多い。
またトッピングに京都の伝統野菜で甘くて風味の良い青ねぎ「九条ネギ」が使われていることが多い。
定番のコショウの他、一味唐辛子、ごま、おろしニンニク、にんにくチップ、ニントン(ニンニク唐辛子)、ラーメンダレ、酢、豆板醤などの唐辛子味噌、ニラ漬け、各種キムチなど薬味が豊富であることが多い。
具材は、モヤシ、メンマ、叉焼、ネギが基本形。
濃厚こってりが身上
一時期、首都圏に「京風ラーメン」なるものが出現した。それはあくまでも京都をイメージした商業ベースの和風であっさりしたラーメンであり、決して「京都」のラーメンではない。京都のラーメンは実際にはかなり濃厚な、どちらかといえば、こってりした部類のラーメンが多い。
「京都」といえばまず「天下一品」(創業1981年/230店舗超の巨大ラーメンチェーン)であろう。あのドロドロしたスープは豚骨ではなく鶏ガラをベースに数種類の材料から採る。果たして何が含まれているのか、というラーメンフリークの謎解きの話題にもなったほど。細かいところは良くわからないが、何しろそのゲル状のスープには驚かされた。今でこそ平気で食べられるが、最初の対面時には開いた口がふさがらなかった。麺を持ち上げるとスープの大半がくっついてくるのだから。絡みがいい、とかそういう表現ではない。箸が立つかどうかが旨さの分岐点、などといっていた頃もあった。最近は昔と比べてスープの材料の構成が変わったようなので、箸が立つことはないかもしれない。このラーメンが京都発で全国を席巻している。およそ200軒超あるようだ。(2023年現在230店)
次に歴史的にも知名度的にも有名なのは「新福菜館」(創業1938年)。京都駅近くの高架下に「第一旭」(創業1947年)と並んでいる店が本店で、両店共に朝から営業しているので朝早くからラーメンを食べたい人には重宝されている。「新福菜館」は、新横浜ラーメン博物館に出店し、一躍全国区的人気になったが、もともと京都では老舗であり、人気のある店であった。
特徴は、味が濃すぎるのではないかと思われるほどに真っ黒な醤油スープ。麺は個性的な丸くてコシの強い太麺。具は薄切りチャーシューが何枚も入っている。個性的であるがゆえに他の店への拡がりはそんなに多くはないが、京都ラーメンの代表的一店には間違いない。
そして、その二店と並んで人気があるのが「ますたに」(創業1949年)であろう。鶏ガラベースの醤油味に豚の背脂をのせたラーメンであり、東京の背脂チャッチャ系よりも10年ほど早く営業を開始している。東京にも暖簾分けとして同名の店がある。両方食べ比べていただければわかるが、味は随分と違う。それはそれで良くできたラーメンなのでむしろ別の店名で出してもいいのでは、と思うほどである。
さて京都の「ますたに」であるが、ここはかなり京都のほかのラーメン店に影響を与えていると思われる。「ほそかわ」をはじめ、この手のタイプが京都には随分とあるのだ。多かれ少なかれ「ますたに」の真似、もしくは影響を受けていると思われる。人気の「夜鳴きや」は独学ではじめた店だが、好きな味として通った店は「ますたに」だったらしい。
さて、これらの三パターンが長い間、京都のラーメン界の大きな流れであった。しかし、京都にもニューウェーブが誕生しつつある。おそらく、今、行列が長い東の代表が「東龍」で西の代表が「杉千代」である。
「杉千代」は、開店当時の味を変えて、京都のラーメンにより近づいた感じになった。個人的には、クセのあった前の味が好みだったが、今のラーメンもまとまりがある。開店前から並びはじめ、本来の開店時間より先に開けることも多いようだ。
「東龍」の東龍そばは、他には見当たらない変わったスープである。いってみれば野菜ポタージュのような黄色みを帯びたものなのだ。どうもカボチャが入っているためにそんな色になっているとか……。だからといって「変わり種」ではない。これまでにないけど、間違いなくラーメンなのである。そして、ここにはもう一つの味がある。それは中華そば。基本メニューがどちらなのかは不明だが、壁のメニューでは「東龍そば」が右端なので「中華そば」は二番手なのかと勝手に思っている。こちらは、一般的な中華そばのように見える。しかし、こちらも十分に人気がある。だからこその行列店なのだろう。開店前には20~30人が並ぶ。唐揚げやサイドメニューなども負けずに人気の一品。
なかなか新店で人気になる店が少なった京都に今、新風が吹いている。